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愛を読むひと

もうご覧になった方が多いと思いますので、
多少(どころか、かなり)のネタばれを覚悟してお読みください。

映画「愛を読むひと」(原作「朗読者」)の話です。

試写会で見たのですが、
間違いなく、今年イチおしの映画ではないでしょうか。

ケイト・ウィンスレットがアカデミー賞主演女優賞をとったのもうなずける、熱演です。
ほかにも作品としてたくさんの賞をとっていますね。

ストーリーは、この映画の公式HPなどで読んでいただきたいのですが、

公開前の有名人コメントの中で、自分と最も近いなと思ったのが、
「感動どころじゃない。見終わってから立ち上がることさえできなかった」という
おすぎさんのコメントでした。

ハンナはユダヤ人収容所の看守として、虐殺の直接の加害者として裁かれる裁判の中で、
「ある秘密」を守ろうとして
他の女性たちより重い罪を認めるのですが、
その秘密の正体がわかると、ハンナのそれまでの行動がすべて腑に落ちます。

もちろん、彼女がマイケルに本を読んでもらったという事実も
「やはり」と思わせますが、
それ以上に、
映画にはまったく描かれていませんが、

貧しい環境で育った彼女が生き延びてくるなかでは、
相手が男性であれ女性であれ、
人と対等な関係を築くということを教えられた経験もなかったのだろうと察しました。

だから、マイケルに対しても命令口調、ユダヤ人に対しても命令口調、
ハンナにとって、人と人は命令するかされるかの関係でしかなかったのです。

獄中でマイケルに心を開いたハンナは
文字を学ぼうとし、ようやく対等な関係を、
塀の外側と内側で築く、かに見えます。

しかし、文字を獲得し、学び、
人間として、女性として、素直に自分の心と会話をしようとすればするほど、
看守時代におかした自分の罪の重さに打ちひしがれていったのではないかと思います。

文字の読めない、書けない人は、
実社会ではそれを補うために、
記憶力や判断力を研ぎ澄まし、鋭い直感で自分を守リ、
成長させるすべを身につけていきます。

だから、時に感情的になり、怒りをぶつけたり、
何の根拠もなく、深い愛情を何かに注いだりします。

それは、文字を獲得してしまった人間が
頭で想像しても、想像しきれない感覚なのではないか、と
私は、文字から切り離されている女性とのかかわりの中で考えたことがあります。

もう一つ、この映画は1980年代の話として描かれますが、
これが今映画になることの意味を、
日本の私たちがどれだけ受け止められたのか、ということも
気になります。

過去の戦争犯罪に、市民はどうかかわったのか、
普通の女たちが、虐殺に直接手を下した事実を
裁判で裁くということが、ドイツやヨーロッパでは戦後ずっと行われてきたし、
アメリカでさえ、戦争犯罪人はいまだに入国させません。

この間、アメリカの小説や映画で
たびたび、過去の戦争犯罪にかかわる話が
出てくるのを見ても、
それが今の自分たちの暮らしとどうつながっているのかを明らかにしようとする
アメリカ市民の意思というか、文化を感じます。
それは今も戦争を続けている国だから、なのかもしれませんが。

これに対して、日本では、過去の犯罪に対しては
責任者に対しても一般兵士に対しても、寛容すぎるほど寛容で、
そこに足を踏み入れようとすると、徹底的な反発をうけます。
戦後の日本の医学が、戦争と深くかかわった人々によって再建されたということも含めて。

このことは、加害を背負わされた人にとっても、
謝罪することも、希望を見出すことも許さない、
「社会的ネグレクト」ではないかと、
私は思うのです。

結末近くで、
ハンナの残したお金を受け取ることを拒否する「被害者」の遺族の、
「気持ちだけは受け止めた」という表情は、

加害者と被害者の「和解」のむずかしさや、
それでも希望はないわけではないという可能性を思わせてくれました。

この映画は、恋愛映画としても高く評価されるべきだと思いますが、
それも、戦争という、個人で超えることのできない国家犯罪にかかわらざるを得なかった女性と、
たまたま少し遅れて生まれた世代の恋愛であり、
そんな二人の生き方、愛し方をを深く描こうとした点でこそ評価されるべきでしょう。

「あなたなら、あのときどうした?」というハンナの問いに、
私たちは答えを探さなければならないと思うからです。

そんなことをいろいろ考えていると、
「愛の深さを感じた」とか「感動した」「泣いた」という映画のコメントを読んでも、
薄っぺらだなあと思ってしまい、
結局、おすぎさんのコメントが一番しっくりするのです。

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[T7] 映画『愛を読むひと』を観た感想

★★★★★結局何もせずに、ごく普通の結婚をするマイケル。自分が幸せな時は不幸な女のことは忘れてしまう。結婚が失敗して、初めて孤独というものを知るのだ。再会のシーンは秀逸だった。どちらも名演技。 素晴らしい。
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