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とうとう裁判ですか

朝日新聞と東大医科研の争いが、いよいよ裁判で争われることになったようです。

医療ガバナンス学会がたびたびこの問題を取り上げています。

昨年10月15日、朝日新聞は朝刊1面で「東大医科研でワクチン被験者出血、他の試験病院に伝えず」という記事を掲載。東京大学医科学研究所の附属病院が2008年に「がんペプチドワクチン」の臨床試験を行った際に、被験者の「重篤な有害事象」(消化管出血)を、同種のペプチドを使う他の試験病院に伝えていなかった、というものでした。

記事の第一印象からは、すごいスクープという感じで(何しろ一面トップですから)、
患者に知らせるべき情報をワクチン承認ほしさに不当に隠したという事件と考えられたのですが、
記事をよく読むと、「法的に問題があることが行われたわけではない」というもので、
何が言いたいのかよくわからないものでした。しかし、一方で
責任ある医師(中村医師)の利益相反は否めない、みたいな個人攻撃が書かれてあり、
私も非常に奇異な感じがしたので、よく覚えています。

しかし、普通の特ダネなら他社がすぐに記事を書くはずが、一切出てこないし、
この記事については、すぐに医療者たちから批判が出て、朝日新聞は検証を迫られました。

そして、その検証というのが、また非常にあいまいであるために、
このほど、中村先生が朝日新聞を訴えた、ということのようです。

記者が、取材した医科研やいろんな医師の主張を、半ば意図的に無視していることなど、
当事者からは最初から謝罪要求が出ましたが、謝罪もされていません。
そもそも、大量出血ということが、医学的に見て、その状態の患者さんではワクチンと関連なくありうるのではないか、ということが多くの医師から指摘されています。

この問題では、医療報道うんぬん以前の
取材対象者と記者の信頼関係というところで、すでに問題がありそうです。

医療報道としては、いろいろ難しい問題が含まれています。
ワクチンの臨床試験だけでなく、副作用についての情報をどこでどう公開するか、また、試験に協力する患者の権利など、医療の中身の判断も問われるため、それを報道機関としてどのように評価するかという問題があります。
これは、イレッサでもそうですが、それが薬害なのかどうかということともかかわります。
副作用はすべて薬害と考えるのか、臨床試験は副作用が当然出ることを前提に行われると考えるのか、
有害事象がおこったらすべてその場で公開すべきか、補償はどうすべきかなどなど。
それを医療専門家のいないところで、裁判所や報道機関は判断を迫られるわけです。

裁判所も報道機関も、現状では、医療者と対立する別の論理に立っているにもかかわらず、
それぞれが、「患者のため」と言いますから、
一般市民はだれの言うことが正しいのか、よくわからなくなるわけです。

少なくとも、今回の場合、朝日の報道の仕方に、最初から問題があったと言わざるを得ないのですが、
医療者がよく言う「患者さんは皆、混乱している。その責任はすべて朝日のせいである」というのも、
ちょっとなあ、という気がしてしまいます。

裁判もいいけれど、信頼関係に基づいて共通の論理を作るということが大切ではないかなあ、と思います。

抗がん剤に関する仕事も出てきた今日この頃、
臨床試験なども無視できない話題になりそうです。
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